3.年に一度の、夢のような一日

大阪で懸命に働く母が、年に一度だけ熊本に帰ってきてくれる日──
それは私にとって一年で一番の特別な日、運動会の日でした。

観客席に母の姿を見つけた瞬間、胸がいっぱいになり、「今日は絶対にがんばろう」と心の中で叫びました。
徒競走のスタートラインに立ち、緊張で足が震えながらもスタートの合図と同時に全力で走ります。
途中までは一等を走っていました。
けれども、沿道から母の声援が聞こえた瞬間、嬉しさがこみ上げて足が止まり手を振ってしまい、気づけばビリに。
それでも母は、笑顔で「よくがんばったね!」と抱きしめてくれました。

運動会が終わると、母は友達やそのお母さんたちに、日頃のお礼を込めて一人ひとり丁寧に挨拶して回りました。
その姿を見ながら、幼い私は「母は私のために、こんなにも頭を下げてくれているんだ」と心に刻んだのを覚えています。

そして夕方、母は私をデパートに連れて行き、きれいな洋服や文房具を選ばせてくれました。
普段は質素な生活だった私にとって、それはまるで夢のような時間。
買ってもらった品物一つひとつに、母の「1年間がんばったご褒美だよ」という想いが込められている気がして、胸が熱くなりました。

けれども、母が大阪に戻ると、また祖母との日常が始まります。
膝に水がたまり、定期的に病院で抜いてもらいながらも、祖母は私を一人で育ててくれました。
毎日の暮らしは決して楽ではなかったはずなのに、祖母はいつも穏やかに笑い、私を安心で包んでくれたのです。
私にとって祖母の存在は、世界で一番の拠り所でした。

今振り返ると、祖母の膝の痛みの裏に、私を守り抜こうとする強さがあったことがわかります。
その大きな愛情があったからこそ、母を待ち続ける日々も、私は寂しさに押しつぶされずに生きることができたのです。

一年に一度の「夢のような日」と、祖母と過ごすあたたかな毎日。
その両方が、波乱万丈な人生のスタートを切った私にとって、何よりの宝物でした。
今でも心に深く残るあの日々が、前を向く私の原点なのです。

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