大阪での暮らしも2年目に入り、ようやく「親友」と呼べる友達もできて、学校生活が順調に回り始めたころのことです。
その日、些細なことでクラスの男子と衝突しました。
彼は、いつも誰かをターゲットにしては嫌がらせを繰り返す子でしたが、ついにその矛先が私に向いたのです。
彼は、学校に提出する書類の保護者欄に母の名前しか書かれていないことを知っていました。
そして執拗に、クラス全体に響き渡る声で問いかけてきます。
「お父さんの名前は?」「お父さん、どこにおるん?」「なんでお父さんおれへんの?」
ただでさえ、父がいない理由を考えたこともない私にとって、その質問は胸の奥を鋭くえぐるものでした。
必死に平静を装おうとしても、頬の奥が熱くなるのを止められません。
「……死んだんよ」そう答える声は、私自身にも届かないほど小さく震えていました。
放課後、家に帰ると、祖母がいつものように「おかえり」と迎えてくれました。
その瞬間、張り詰めていた心の糸がぷつりと切れ、玄関先で涙があふれ出しました。
祖母は何も聞かず、ただ背中を優しくさすってくれました。
あの時の温もりが、どれほど心強かったことか──今でも鮮明に覚えています。
それでも、あの男子の言葉は、私の心に「なぜ?」という小さな疑問の種を残しました。
母から「お父さんはもう亡くなった」と教えられて育った私は、その言葉を信じきってきたはずなのに、
ふとした瞬間、胸の奥でその疑問が小さくざわめき始めたのです。