8.アルバムが語った真実

あの日、母が珍しく真剣な顔で言いました。
「陽子、大切な話があるから聞いてくれる?」

居間に座る私の前に置かれたのは、見たこともない分厚いアルバム。
恐る恐るページをめくると、そこには赤ん坊の私を抱く男性の姿がありました。
母と寄り添い、幸せそうに微笑むその人──それが、私がずっと「亡くなった」と信じてきた父でした。

次々と現れる三人で写った家族の写真に、私の心臓は早鐘を打ちます。
母は静かに語りかけました。
「お父さんは生きてるよ。いろいろあって今はお母さんとは別の人と結婚して、陽子より5歳年下の女の子のお父さんになってるの。
だから、陽子にはお父さんがいないわけじゃない。ちゃんと生きてるし、会いたければ会える。お母さんは違うけど、妹もいるから大丈夫やで。」

「お父さんは生きてる──?」
その言葉が、重く、鋭く胸に突き刺さります。

長い間「亡くなった」と教えられてきた私にとって、父は遠い存在であり、思い描くことすら許されない幻でした。
それが突然、アルバムの中で生き生きと笑い、別の家族と日常を重ねていると告げられたのです。

混乱する心は、母の言葉を受け止めきれませんでした。
「違う!違う!……そんなことなら、死んでる方がよかった!」
大人の事情などわかるはずもない私は、心の中でそう叫んでいました。

母の手は震えていました。私を傷つけたくない一心で、ずっと真実を伝えられずにきたのでしょう。
それでも、その日を境に、私の世界は大きく揺らぎ始めました。
「お父さんは死んでいない」──その事実だけが、鮮烈に胸に残ったのです。

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